私のeTaxによる確定申告も今回分で最後の予定です。今回は外国株式等の配当金で源泉徴収されている外国税額を還付してもらいます。私の場合、米国株式、投資信託、ETF等から配当を受けているので、外国税額控除という申告を行うことで所得税の還付を受けます。
外国税額控除の仕組みを解説した後、実際にeTax上で外国税額控除を申告していきます。
- 外国税額控除は二重課税されている分を還付するための仕組み
- 限度額の計算はややこしいが、申告は難しくない
外国税額控除とは
日本国内に居住している人は、国内・国外の所得に関係なく日本で課税されます。一方で海外での所得に対して、現地で課税されることがあります。このような場合に二重で課税されている部分を調整する仕組みが外国税額控除です。外国税額控除は所得控除ではなく税額控除になります。
外国税額控除には限度額が設定されており、限度額は以下の計算式で求めます。
所得税の控除限度額 = (所得税額) x (国外所得金額) / (所得総額) ・・・ (ア)
外国所得税額が上の控除限度額に満たない場合は、外国所得税額が外国税額控除額になります。外国所得税額が控除限度額を超える場合は、次の1, 2のいずれか少ない方の金額が外国税額控除額になります。
- 外国所得税額から控除限度額を差し引いた金額
- 復興特別所得税の控除限度額
ここで、復興特別所得税の控除限度額は以下の式で求めます。
復興特別所得税の控除限度額 =復興特別所得税額×(国外所得金額) / (所得総額)
控除限度額の計算
前節で出てきた控除限度額の計算式(ア)について少し考察してみます。
所得税の控除限度額 = (所得税額) x (国外所得金額) / (所得総額) ・・・ (ア)
まず、所得税額は以下の表から求めることができます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
上の表において、課税される所得金額(所得総額)をTI、税率をs、控除額をKと置いてみると、所得税額は以下の式で表せます。
所得税額 = TI x s – K
※厳密には、所得税額は配当控除や住宅ローン控除などの他の税額控除を差し引いた後の金額です。ここではその他の税額控除がない前提で式を立てています。
国外所得金額をFIとすると、控除限度額は以下のようになります。
所得税の控除限度額 = (所得税額) x (国外所得金額) / (所得総額)
= (TI x s – K) x FI / TI
= FI x (s – K / TI)
米国で源泉徴収される税率は10%ですので、控除限度額を超えない場合は以下の式が成り立つことになります。
所得税の控除限度額 > 米国での源泉徴収税額
FI x (s – K / TI) > FI x 0.1
両辺をFIで割ると以下の式になります。
(s – K / TI) > 0.1
左辺が0.1より大、すなわち10%を超えれば控除限度額以内ということになります。sは所得税率ですから、所得税率が10%以下の場合はこの式は成り立たず、限度額未満になります。税率が20%の場合、K/TIが0.1を超えなければこの式が成り立ちます。20%の時のKは上のテーブルから427,500円ですから、所得が4,275,000円以上であれば K/TIが0.1以下になり、式が成り立ちます。要するに所得が高い場合、米国で源泉徴収された税額が限度額以内となって還付される可能性が高いということです。
外国税額控除の繰越制度
外国税額控除には、繰越制度もあります。外国所得税額が控除限度額を超える場合、前年以前3年内の各年の所得税額控除限度額のうち、繰越控除額を限度として、超える部分の金額を所得税の額から控除できます。また、外国所得税額が控除限度額に満たない場合、前年以前3年内の各年において控除しきれなかった金額があるときは、その控除限度超過額の合計額を一定の範囲内で所得税の額から差し引くことができます。
- 国税庁「居住者に係る外国税額控除」
eTaxでの外国税額控除の入力
それではeTaxでiDeCoに係る外国税額控除の申告を行なっていきます。入力前に特定口座年間取引報告書を手元に準備しておきます。私の場合、ふたつの証券会社で外国税の配当金を得ていたので、手作業で合算しておきました。合算せずに2件入力することもできますが、まとめておいた方が手間が省けます。どちらの口座からも米国のみで税金を源泉徴収されています。
まずは保存してあるデータを指定して、前回保存した状態に戻します。確定申告書等作成コーナーのトップページにある「保存データを利用して作成」をクリックし、次のページで「作成再開」をクリックします。「ファイル選択」をクリックし、保存してあったデータファイルを指定してから、「保存データ読込」をクリックします。所得税の確定申告書の横にある「作成再開」をクリックすると前回保存した状態に戻ります。この状態での納付額ないしは還付額を確認しておくと、入力終了後に外国税額控除によって減額される所得税が確認できます。
「控除の申告 (2/2)」のページまで「次へ」ないし「戻る」をクリックして進みます。「外国税額控除等」をクリックすると、「外国所得税額の入力」画面に遷移します。「+外国所得税額を入力する」をクリックすると外国税額控除の入力画面に遷移するので、この画面で入力を進めていきます。
「国名」に米国、「所得の種類」に配当、「税種目」に源泉所得税と入力します。納付確定日、納付日はどちらも令和6年12月31日とします。「源泉・申告(賦課)の区分」で源泉を選択、所得の計算期間は令和6年1月1日から令和6年12月31日を入力します。
「相手国での課税標準」に配当等の金額の合計を、「相手国での課税標準に係る外国所得税額」に源泉徴収された外国税額の合計を、それぞれ年間取引報告書をベースに入力します。「相手国での通貨単位(カナ)」「相手国での課税標準(外貨)」「相手国での課税標準に係る外国所得税額(外貨)」は記載があれば入力します。
私の場合は米国のみでしたのでここで終了ですが、他の国もあれば「もう一件入力する」をクリックして入力していきます。入力が終了したら、「入力内容の確認」をクリックし、「次へ」をクリックします。
「調整国外所得」に配当等の金額の合計を入力します。「繰越控除余裕額又は繰越控除限度額の入力」は前節で説明した繰越制度に関する入力です。画面の指示に従って、前年の確定申告書から転記を行います。入力が終わったら、「入力終了」をクリックします。
「次へ」を何回かクリックして「計算結果の確認」のページまで進むと、納付または還付金額が表示されます。外国税額控除は税額控除なので、控除額分還付が増えていることが確認できます。
まとめ
ここまで、外国税額控除の概要と限度額の計算、eTaxでの入力方法について解説してきました。私自身の確定申告はこれで終了なので、eTax入力シリーズはこれで完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
1級ファイナンシャルプランニング技能士
CFP®️認定者
1級DCプランナー